それぞれの木の物語をうつわとなって紡いでいく
「樹々ひとつひとつの年月に宿る静かな強さや美しさ、個々の表情が輝くよう、そっと手を添えるような感覚で日々手を動かしています。」
様々な植物が芽吹き、あらゆるところから聞こえてくる動物や虫たちの声。
村田さんが生活と作品制作の拠点として選んだ、三重県多気郡大台町の環境。
そんな自然に恵まれた環境は、村田さんの五感に響き、今の作品づくりには欠かせないものとなっているとおっしゃいます。

目の前にある、その木が持つとっておきの表情を見極め、あえて図面を引かず、手を動かし、仕上げていきます。
木と対話するような感覚で仕上げられた作品からは、木のこれまでの年月の物語を感じることができます。
村田さんの手によって、うつわに姿を変えたそれらが食卓に並ぶと、食卓がまるで物語のワンシーンにように。
温かなぬくもりに包まれ、穏やかな空間が広がります。

美しい節と木目をいかしたプレート。
リムに水面のような柔らかさを意識した彫りを入れることで、木目や節の力強さとのバランスが心地良い。
高台のあるシルエットは横からみても美しく、少し特別感のある仕上がりとなっています。
クルミの木はとても軽く、手馴染みもよく、ついつい手をのばしてしまいます。
ケーキや焼き菓子をのせておやつプレートとして。
パンやチーズにもよく似合います。
また食事の際は、サラダの盛り付けたり、取り皿としても。

「作品どの子にもそれぞれのエピソードがあるんです!」と嬉しそうに話してくださる村田さん。
木の表情のお話を伺っていると、それらは自然の風景にも似たところがあり、自然のものは全て巡り巡って繋がっているんだなと改めて気付かされます。
「木のうつわは柔らかく、温かく料理を迎え入れてくれます。
その分、陶磁器よりフォークなどで傷がつきやすいのも事実。
でもその傷も、積み重ねた食卓の記憶や余韻のようで愛おしい、そんな風に思って使っていただけたら幸いです。」とおっしゃる村田さん。
それぞれの暮らしの中で、溶け込みながら暮らしを支え、些細な喜びや感動を届けられるものでありたいという想い。
森から出て、たどり着いた食卓で、新しい物語を共に紡いでいただけますように。