大阪にてご夫婦ユニットの金工作家として活動されている窓の庭さん。
おふたりとも、高等学校から大学、大学院まで建築を学ばれます。
大学院に在籍している頃、いくつか実務的な設計をする中で、建築という大きなスケールで考えることに違和感を覚え始め、小さなスケールを探し始めたというおふたり。
当時、模型制作に使っていた糸鋸で真鍮を切ったりして遊びはじめたことが、今へと繋がる、制作をはじめるきっかけになったそう。

「ある時から、窓を介して見る様々な風景は、五感のほとんどを遮断してトリミングされた一部分を見ていることから、現実とは少し切り離れていると思っていました。」とおっしゃる窓の庭さん。
金工作家として独立を進める中で、アトリエとして借りる前の、空き部屋の窓から見えたという「庭」。
その庭は、草木が生い茂って、蝶や虫がいたり、空を見上げると鳥が飛んでいるような、いわゆる「普通の庭」だったそうですが、高揚した気持ちや窓のトリミングによって、色んな物語を想像することができたおっしゃいます。
屋号の「窓の庭」は、そんな体験から名付けられます。

アトリエの窓から見える風景や、時に心に映る情景。
それらをひとつずつすくい上げ、金属の装身具として形にかえて、最初のシリーズ、窓辺の風景「MADOBE」が生まれます。
現在では、窓辺の風景「MADOBE」の他、石の世界「JITEN」、欠片採集「KAKERA」、森の遭遇「MORIDE」、波の情緒「NAMINO」、図鑑の世界「ZUKAN」の5つのシリーズを加え、これまでの学びで培った確かな知識をいかして、金工における、成形や焼上げの伝統技法を重ね合わせ、新しい作家性を纏うようなスタイルを常に探求しながら、6つのシリーズの制作を軸に活動されていらっしゃいます。

「現と夢のはざまで、その出逢いを形に」
このフレーズが、6シリーズそれぞれのコンセプトを集約する表現であり、作家活動における窓の庭さんの言わばキャッチコピー。
作品のモチーフは、庭に咲き誇るお花や、ふわっと舞う蝶、大空を気持ちよく飛び交う鳥たち、今さっきお昼寝から目覚めたであろう猫といった、決して特別な風景ではなく、ふっと手を止めた際に目に飛び込むような、周りに目をむけると誰にでも見ることのできるような風景であるけれど、それらは、ただただ忙しく過ぎ去る瞬間から心放たれる風景でもあったり、また毛並みといった容姿、威嚇するような動物的な仕草はリアルでおっかなさもあるけれど、どこかなんだか憎めないオーラを放つ生き物たちであったりします。

どれもモチーフはあくまでも「現実」なのだけれど、それらは、わたしたちをふわっとした「空想」の世界に連れて行ってくれる。
わくわく感とまるで浮遊したような心地良さ。
目の前にある作品に自分の感情をプラスし、癒されたり、懐かしんだり、擬人化したりすることで、新たな物語が生まれ、手にした人の心にすっと入り込む。
それが窓の庭さんの作品なのです。

圧倒的なセンスと技術力、表現力。リアリティーとフィクションの絶妙なバランスが魅力の世界を是非覗いてみてくださいね。
一気に引き込まれ、虜になること間違いなしです。

お気に入りを身につけて出かける時。
気持ちも背筋もしゃんとする。

皆様が心くすぐられるお気に入りと出会って、そのお気に入りを相棒に、共にお出かけいただけることを願って。